季刊 表現の技術

すべての人間に公開

薄コーヒーの思い出

 

STU48の甲斐心愛さん(17)がブラックコーヒーを飲めるようになったというので自分がブラックコーヒーを飲めるようになった経緯を思い出すなどした。

ぼくの祖父は薄いコーヒーが好きで、喫茶店に入ったときには「アメリカンを2倍に薄めたやつ」を頼んでいた。インスタントコーヒーを飲むときは耳かき3杯くらいカップに入れて溶き「このくらいが一番うまい」と言っていた。

このごく薄いコーヒーはコーヒー風味の麦茶といった味で、麦茶や白湯が好きな人ならば好きな可能性がある。あと水がうまければうまいと思う。祖父は何度か転居しているがずっと水がおいしい土地に住んでいて、北アルプスのふもとにある盆地で独身寮の管理人をしているとき、ぼくにこの薄コーヒーを教えてくれたのであった。

ぼくは真似して薄いインスタントコーヒーをいれて飲むようになり、次第に粉末の量が増えてコーヒーらしい味になってゆき、中学生になると夜ふかしするときなど殊更に濃くしたりもするようになって、やがて普通にブラックコーヒーを飲める大人になった。

就職して会社で徹夜した折、特濃インスタントコーヒーを飲んだら気持ち悪くなって褐色のゲロを吐き、そのせいなのか今はインスタントコーヒーはめったに飲まない。