季刊 表現の技術

すべての人間に公開

肥後守ピルを切り割る冬隣

私は昭和時代に生まれたが、昭和というのは長い時代で私が生まれる前の昭和が何十年もある。

私が生まれる前の昭和時代、まだ鉛筆削り器が普及していなかったので、小学生は鉛筆を小さなナイフで削っていた、らしい。「肥後守(ひごのかみ)」と呼ばれる折り畳めるナイフである。

ビタミンというのは摂取しても体が吸収できる量は限られていて、多くは排泄されてしまうそうで、だからビタミン剤を飲んでもムダが多い。

ムダを減らす方法は、ビタミンを少量ずつ何度も口に入れることである。そこで私はビタミンBとCの錠剤を肥後守で切り割って朝と晩に飲む。

ついでにアメリカ産の亜鉛の錠剤も、これは一錠あたりの含有量が多すぎて、飲むと副作用で気持ち悪くなるので、やはり半分に割って毎日半錠ずつ飲んでいる。

切り割るときは机を傷つけないようにメモ帳の裏表紙を台にする。そうこうするうち10月の肌寒い朝にできたのが表題の俳句である。

 

f:id:shonitan:20201214155610j:image

 

白いのが亜鉛、黄色いのがビタミンBとC。