季刊 表現の技術

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酸っぱいポテトチップスをつい買ってしまう

高校生のときに林望先生の『イギリスはおいしい』というエッセイがベストセラーになって、学校の図書室に入ったのを借りて読んだ。

この本で、代表的なイギリス料理のフィッシュ・アンド・チップスについて、いくつかのことを学んだ。

1.イギリスには、白身魚のフリッター(天ぷらのような衣つきの揚げ物)とポテトチップスをセットにした、フィッシュ・アンド・チップスという大衆料理がある。

2.ここでいうポテトチップスとは、日本で言うところのフライドポテト、すなわち拍子切りにしたじゃがいもの素揚げのことである。

3.フィッシュ・アンド・チップスには、塩と大量の酢とをかけて食べる。

4.ちなみに日本でポテトチップスと呼ばれているもの、すなわち薄切りにしたじゃがいもを揚げたスナック菓子は、イギリスではポテトクリスプスと呼ばれる。

以上を説明したのち、林先生はつけくわえる。

曰く。ポテトクリスプス(和名ポテトチップス)においても、イギリスでもっともスタンダードな味付けは「ソルト&ビネガー」、すなわち塩と酢味である。そのさっぱりとした味になれると、日本の「いじくり過ぎ」な味のポテトチップスなど二度と食う気がしなくなると。

コンソメパンチとか、わさびとか、バター醤油とか、「いじくり過ぎ」の国産ポテチをうまいなーと思いながら食っていたぼくは、まだ見ぬ酸っぱいポテトチップス、もといソルト&ビネガー味のポテトクリスプスに思いを馳せた。

それはどんなにうまいものなのであろうか。イギリスに行けば食えるのだろうか。いつか日本でも発売されるのだろうか。

この国もいつの日にか、酸っぱいポテトチップスが生産され、販売されるような成熟した社会になるのであろうか。

日本はまだ若く、わたくしも若かった。わたくしは正月に食べる なます だとか、なまこの酢の物だとか、すっぱい食い物が好きな少年であった。

今はカルディみたいな輸入食品の店や大きなスーパーに行けば、ソルト&ビネガー味のポテトチップスが買える(アメリカ産が多いようだけど)。

そして、コンビニに行けば国産の酸っぱいポテトチップスもつねに1種類か2種類はある。

最近ついつい買ってしまうのは湖池屋の「めっちゃすっぱムーチョ す~っぱいビネガー味」で、これはかなり酢がきついのでよほど酸っぱいのが好きな人にしかすすめられない。一般におすすめなのは「すっぱムーチョチップス さっぱりビネガー味」、あるいは「さっぱムーチョチップス うま塩レモン」あたりがいい塩梅です。