季刊 表現の技術

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両手を見せろ

ネトフリで Dope という薬物犯罪のドキュメンタリーを見ていて気がついたのだが、登場するアメリカの警察官は被疑者に銃を突きつけたとき「手を上げろ」とは言わない。「両手を見せろ」というのです。

理由を想像すると、まず手を上げさせても、手のひらのなかに小さい銃や刃物を隠していたら危険である。相手が車の中にいる場合、素直に手を上げたと思ったら天井に隠してあるショットガンを掴んだりするかもしれない。組織の隠れ家に踏み込んだときなど、手前にいる者が上げた腕で部屋の奥の視界が遮られたりすると危ない。あとは薬物の取締りだからなのかな。小さいパッケージを小さい手の動きで隠すのは簡単である。スマホを操作して仲間に危険を知らせるかもしれない。だからとにかく被疑者の手を監視下に置かなくてはいけない、ということなのだろうか。

Dope おもしろかったです。出てくる犯罪者も法執行機関職員も煎じ詰めると「仕事だからやるしかない」という姿勢でものすごく頑張っている人たちで、俺はそんなふうに肚を据えるのが苦手だから、変な言い方だけど眩しく感じてしまった。