季刊 表現の技術

すべての人間に公開

元日に思い出したこと

うちの雑煮は焼き餅を汁に入れるタイプではなく、汁で餅を煮る方式だった。

家族に餅好きが多かったので、狭義の正月を過ぎても雑煮はよく食べた。ひんぱんにつくるものだからしだいに作りが雑駁になってきて、朝の味噌汁の残りでも、昨日の豚汁の残りでも、鍋の煮汁でも、手近な汁で餅を似たカジュアルな雑煮が食卓にのぼる。これがそれぞれにうまい。

 

中でも特にうまかったのが、餅と一緒に冷や飯をも投入して煮た「雑炊雑煮」と言うべきもので、餅から出たとろみが飯つぶに絡む一方、米つぶは餅の表面をでこぼことコーティングして汁の絡みをよくする。

冬の朝飯に、前夜の鍋の残り汁でつくったのが出てくることが時どきあったのを思い出した。