季刊 表現の技術

すべての人間に公開

ああ人はこうやって心のバランスを崩していくのだな。

朝だ。土曜日だ。今週はろくにあるいていないので、午前中にシーツとタオルケットの洗濯、部屋の掃除を済ませたら、10キロくらい離れたBOOKOFFまで歩いていこう思っていた。

ふとんの中で目を覚ましたら、部屋にある本棚の重みで床が抜けるんじゃないかと不安になった。特に怖いのは窓の近くにある8段組のやつである。外で風の音がしている。窓を開けたら、突風が吹き込んで屋根を内側から吹き飛ばしてしまうんじゃないかと不安になる。怖い。怖いので、タオルケットをかぶってもう一度寝てしまう。

しばらくしてまた目をさます。8段の本棚の下の床は、もうきしみ始めているうような気がする。風の音もやまない。怖い。眠ってしまえば怖くない。ぼくはもう一度タオルケットをかぶる。

眠りに落ち込みながら(不安だといくらでも寝られるタイプだ)、ああ人はこうやって心のバランスを崩していくのだな…と悲しくなった。秋口あたりから、活動的じゃなくなり、家にこもりがちになり、そのためいっそう気分が落ち込んでますます非活動的になる。ということをぼくは毎年繰り返しているのだが、その発端はいつもこんな感じなのだろうと思ったのである。

三度目に目覚めたとき、時計を見た。10時だった。もう14時にはなっていると確信していたのに、妙な気分だった。時空がゆがんだのかもしれない。ともかく助かった。まだのぞみはある。風は強いが、晴れたいい日だ。とりあえずベランダに干しっぱなしになっている洗濯物を取り込んで、シーツとタオルケットを干すスペースを作らなくてはいけない。

 

※追記

『本で床は抜けるのか』によると、そう簡単には本で床は抜けないらしい。