季刊 表現の技術

すべての人間に公開

欲望の質に自信がない

他人が持っているものを持っていないと劣等感を感じて、同じものを手に入れたくなることが多いいっぽう、自分は何が好きなのか、何を必要としているのかがよく分かっていない気がして、自分の欲望は質(純度?)が低いんじゃないかといつも思っている。

とはいえ、ぼくはバイキングでマッシュルームのマリネはまず、とらない。他人がマッシュルームのマリネをとっているからといって、自分もとらなければと思ってとったりはしない。マッシュルームのマリネは別に食いたくないからだ。

しかし着席後、そいつがマッシュルームのマリネを実にうまそうに食べているのを目撃してしまったらどうでしょうか?たぶん2周目でマッシュルームのマリネとりに行くと思う。

ぼくはレバニラ炒めは好きだ。もともとレバーは好物ではなかった。レバニラ炒めを好きになった日のことは憶えている。深夜にテレビ番組を見ていたら、郷野聡寛(ごうの・あきひろ)という総合格闘家が、大好物だという近所の中華料理屋さんのレバニラ炒めを食っていた。

「こんなにおっきい…」郷野選手は官能的な声を漏らし、たしかにずいぶんと大ぶりに切ってあるレバーをほおばった。うまそうだなと思ったので、翌日レバニラ炒めを食べてみたらおいしかった。それ以来レバーが好きになって、今は焼き肉屋さんでは必ずレバーを頼むし、わざと生焼けで食べたりする。スーパーの惣菜コーナーにあるレバーを甘辛く炒めたやつは当然ながらしっかり火が通っていて、どちらかといえばボソボソした食感になっていることが多いものだが、これはこれでうまいと思う。多分レバーは本当に好きなはず。自信ないけど。